この半年ぐらい、仕事や儀式や演奏で、ずーーーーっと忙しかったのですが、12月に入りましたら、ようやく時間ができましたので、久しぶりにブログの更新です。もし、待っていてくれた方がいたとしたら、嬉しいです。

今回は3回シリーズで、ウブド近郊の観光地をご紹介したいと思います。


第1回は、ウブド観光の定番の一つゴアガジャ。

ウブドの街から車で約15分ぐらいのところに、有名なゴアガジャ遺跡はあります。ゴアは「洞窟」、ガジャは「象」、つまり、ゴアカジャとは「象の洞窟」という意味で、10世紀~14世紀の頃、インドから来た僧侶によって修行の場として使われました。

確かなことはわかっていませんので、諸説あるのですが、当時、ここではガネーシャ派、シヴァ派のヒンドゥ教徒と仏教徒とが共存して修行を行っており、争いのない平和な時代だったと言われています。その後はあちこちで争いが起きて世の中が混乱し、ゴアガジャもすっかり地中に埋もれていましたが、1917年にバリ島で発生した大きな地震によって再び姿を現し、洞窟は1923年、そして沐浴所は1954年に、オランダ人によって発見されました。現在では、たくさんの観光客が訪れる人気の観光地となっています。(注: 神聖な場所ですので、生理中の女性は入ることができません)
 


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ゴアガジャといえば、やはり一番印象的なものはこれですね。皆さんがここに来ましたら、是非この巨大な「ボマ」の顔を背景に写真を撮りましょう。ボマというのは森の王様で、水の神様(ヴィシュヌ)と大地の女神(ペルティウィ)の息子です。ボマはとても力持ちで、邪気や悪しきものから守ってくれる魔王としても知られています。バリのお寺や家の入口にはよく、魔除けとして、ボマの彫刻が彫られています。

この洞窟を中に入りますと、左右に瞑想するための場所が作られています。ここは2つの部屋に別れて、右はシヴァ神を祀る部屋、そして左はシヴァ神の息子ガネーシャ神を祀る部屋です。


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この突起状の彫刻は、シヴァ神のシンボルの男性器(リンガ)で、繁栄の象徴です。シヴァ神はバリ・ヒンドゥ教で最も尊敬される神様で、破壊の神様であり、同時に再生の神様でもあり、そして病を治す神様でもあります。

ここには3つのリンガが並んでいて、名前はトリ・リンガといいます。トリというのはサンスクリット語で3を意味します。シヴァの教えでは、3というのは特別な意味を持つ数字です。例えば、人の人生は生まれて、生きて、死ぬという3つで構成されています。

リンガに巻かれている布ですが、白はシヴァ、赤は創造神ブラフマ、そして黒は世界の維持と繁栄を司るヴィシュヌのシンボルカラーで、このトリ・リンガはその三柱の神が一つに合わさった三神一体を表しているそうです。

バリでは、シヴァ神は天上の最高神アチンティヤ、神様の世界のシヴァ、人間界のトゥワレンという3つの姿で表現されるのが一般的ですので、このように、シヴァ神のシンボルであるはずのリンガが、ブラフマやヴィシュヌといった他の神様と合わさった三神一体の形で表現されているのは、他では見たことがありません。とても古い時代に作られたご神体ですので、もともとはシヴァだけを表していたのが、近年の三神一体の考え方に合わせて変えられたのだと思います。


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ガネーシャ神は太った人間の体に象の頭を持ち、手が4本あり、それぞれ違うものを持っています。

下の右手は牙を持ち、武器として敵と戦います(牙ではなく、筆で、知恵の象徴という解釈もあります)。上の右手の数珠は集中力と自己のコントロールを、下の左手の壷にはガネーシャ神が大好きな甘いものが入っていて、幸せを表しています。上の左手が持つ斧は守るため、あるいは行く手を妨げる障害を切り開くというシンボルがあります。ガネーシャ神は知識の神であり、守り神でもあり、商売繁盛の神様としても祀られています。ガネーシャのポーズは所によって変わり、様々な意味を持ちます。


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右の神様は、子供の世話が好きな女神ハリティです。


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世界を維持するヴィシュヌ神が、ガルーダという巨大な鳥に乗って我々を守ってくれます。


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この建物は最近新しく出来たもので、この地域の人々の祖霊や神様が祀られています。


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この沐浴所で体を清め、瞑想を行いました。聖水はもともと7つの石像から出ていましたが、地震で真ん中が崩れて使えなくなりました。全てインドにある有名な川を表しています。


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ゴアガジャを上から見下ろした景色。ウブド周辺は緑が多くて気持ちが良いです。


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昔から信仰されているご神木。この木の名前はプレといい、神聖で特別な力があって、神様の依り代となるご神体のお面(トペン)の材料によく使われています。

 
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こちらの木からは、綿がいっぱい飛んでいます。バリ語ではプニャンカプーの木と言いますが、色々調べた結果、英語では「Bombax / Red Silk Cotton Tree」 と言うのだそうです。

花が満開の時はとてもきれいです。昔はこの木の綿をヤシ油に浸けて、ランプにしたのではないかと考えられます。先のプレの木や、このプニャンカプーの木に巻かれた白黒のギンガムチェック柄の布は、その木が神聖であることを表しています。生地の白は「善」、黒は「悪」のシンボルで、良い霊気を感じる人もいれば、悪い霊気を感じる人もいます。

この木の樹齢は何百年ぐらいでしょうか。大きさから見ると600年以上はあるかと勝手に推測します。


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プニャンカプーの木の綿。


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風に飛ばされて地面に落ちているプニャンカプーの綿。


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敷地の上の部分はヒンドゥ教の場所ですが、この階段を降りますと、下には仏教が使っていたお寺の跡があります。


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非常に面白い形の根っこですね。当時の聖者はこの神聖な木の下で瞑想を行っていたのではないかと想像します。この木はバリ語でプニャンアアの木、こちらもいろいろ調べましたところ、英語では「Ficus Erecta」といいまして、イチジク属の木イヌビワ( 犬枇杷)、だそうです。日本でも生えていますか?

普通のイチジクとは違って、その実は人間には食べられないのですが、野生動物ならよく食べます。巨大なガジュマル樹もバリではよく見掛ける聖なる木ですが、こちらもイチジク属の一種だそうです。ゴアガジャにもガジュマル樹はありますが、まだ若くて貫録がありませんので、写真は撮りませんでした。


以下は仏教のお寺の跡です。過去の地震で崩れしまいましたが、昔はとても立派だったのだろうと想像できます。それにしても、昔の人の巨石を扱う技術に感心します。


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by I Kadek Sujana (説明に誤りがありましたら、ぜひ、ご指摘下さい。)